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表面分析・断面分析
2025.09.16
XPS(ESCA)の原理
概要
X線光電分光法 (XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy) は、ESCA (Electron Spectroscopy for Chemical Analysis) とも呼ばれる表面分析手法のひとつです。試料表面から数nm程度の元素組成及び化学状態 (価数や結合状態) に関する情報が得られます。
原理
超高真空状態で、固体試料表面に軟X線 (MgKα線やAlKα線) を当てると、光電効果により、表面物質中の原子に束縛されている電子は、X線のエネルギーによって真空中に飛び出します。光電効果で飛び出した電子を光電子といい、結合 (束縛) エネルギーは、元素固有のエネルギーを持つため元素の定性ができます。また、化学状態の違いが、結合エネルギーのシフト (化学シフト) として現れるため、元素の価数や結合状態が分かります。
測定方法
一般には、ワイドスキャン分析 (広いエネルギー範囲を走査) によりどんな元素が存在するかを調べます (定性分析)。また、ピークの面積比により元素組成がわかります (半定量分析)。次にナロースキャン分析 (特定元素が現れるエネルギー範囲を高分解能で走査) して、ピーク位置 (化学シフト) とピーク形状から化学状態を特定します。最後に深さ分析して、試料の深さ方向に対する、元素組成・化学状態の変化を測定します。
Fig.1 測定方法
用途例
- 電子基板配線パターンの銅表面の変色部の分析 / ソルダーレジスト表面の分析
- 金電極表面の変色及びはんだ濡れ不良解析 / セラミック表面のシミの分析
- 黒鉛の結合状態の解析 / 樹脂表面の残留物分析 等
よくあるご質問
XPSは、なぜ表面数nmの分析ができるのですか?
XPSは、軟X線のエネルギーによって内殻電子が飛び出す光電子を計測します。
しかし、この光電子の平均自由工程(散乱・衝突などの妨害を受けることなく進むことができる距離)が数nmしかないため、数nm以上の深さの光電子は検出器まで届かないためです。
長所と短所を簡単に教えてください。
【長所】
中和イオン銃があるため試料が絶縁性でも測定できます。また、オージェ電子分光(AES)よりも化学シフトによる化学状態の識別がしやすいです。
【短所】
高真空下での測定のため、液体、ガスの測定はできません。また、分析エリアが径10μmから100μm程度のため、数μm以下の微小部位の測定はできません。
どれぐらいの大きさの試料まで測定できますか。
1 cm × 1 cm × 0.5 cmが目安です。
試料が大きすぎると測定時の真空状態の悪化につながります。
試料はどのように準備すればよいですか?
指紋、ゴムやビニール手袋の成分が試料に触れないように注意願います。また、試料保管もチャックつきのビニール袋を用いず、アルミホイルの光沢のない面で包んでください。
ビニール中の可塑剤が試料表面に転写され、測定結果に影響が出る恐れがあります。これは、数nm~数十nmの表面分析(XPS、AES、TOF-SIMSなど)では、極めて重要です。
深さ分析はどうやって試料を削るのですか?
一般的には、重イオンであるアルゴンイオン(Ar+)を試料に当てて、表面原子(分子)をたたき出す(スパッタリング現象)を利用して削ります(Ar+エッチング)。
一方、試料へのダメージや変質、ある特定の元素が選択的にエッチングされる可能性もあるため、注意が必要です。
有機物には、比較的ダメージが小さいArガスクラスターイオンやカーボンクラスターイオン(フラーレン:C60+など)を用いることもあります。
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