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石綿 (アスベスト) 調査・分析

2025.12.26

海外のアスベスト事情は?日本との違いを解説

アスベストは、かつてその優れた耐熱性や耐久性から、建築材料や工業製品に広く使用されてきました。しかし、アスベストは吸入すると肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになり、世界中で問題となっています。

ILO (国際労働機関)が、石綿を職業がんの危険性が認められる物質の一つとして国際基準とガイドラインを策定し、世界のアスベスト規制を推進しています。ILOの「アスベスト使用禁止条約」には日本も批准しており、2022年時点では35ヵ国が批准しています。

本記事では、海外のアスベスト事情を日本と比較しながら、アスベスト問題の現状について解説していきます。

1. 石綿の定義や規制:海外と日本の比較

1.1 石綿の定義:国際的な基準と各国の違い

石綿とは、蛇紋石族の造岩鉱物に属する繊維状のけい酸塩鉱物で、主に6種類に分類されます。国際的には、6種類の石綿のすべてが健康被害をもたらす可能性があるとして、規制の対象となっています。しかし、国によっては、一部の石綿を規制対象外としている場合もあります。

また、石綿条約では石綿含有物の定義がなされていません。このため、日本では「0.1重量%を超えて含有している製剤その他の物」と定義しています。世界的には1重量%を規制の基準としている国が多いため、日本は石綿を厳しく規制していると言えます。

1.2 規制の内容

アスベスト規制の内容は、アスベスト含有製品の製造・輸入の禁止、アスベスト含有製品の使用制限、アスベストの適切な管理など、国によって異なります。

Table 1 石綿規制の法整備の比較

国名等 法整備の時期 規制の概要

EU

1983年~1993年

5種の石綿の販売、使用を全面禁
(石綿セメント管等は除外)

イギリス 1985年~199年代

3種類の輸入、使用を禁止
除去業者に対する認可制度の適用

西ドイツ 1986年~1993年 5種の石綿の流通、使用を全面禁止
フランス 1988年~1994年 5種の石綿の輸入、販売、使用等を全面禁止
アメリカ 1989年~1991年

4種の石綿含有製品の製造、輸入、加工、流通を禁止
(EPA(米国環境保護庁)が認めるものは使用が認められる)

カナダ 1988年~1989年 2種の石綿を含む製品の広告、販売、輸入を原則禁止
日本 1995年~2006年 6種の石綿の製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止
ロシア アスベストの使用や製造を許可
中国 2種以外のアスベストの使用や製造を許可

(「アスベスト問題に関する厚生労働省の過去の対応の検証」を参考にイビデンエンジニアリング(株)が作成)

2. 過去の使用量・用途:海外と日本の比較

2.1 過去の使用量:国ごとの統計データと比較

過去のアスベスト使用量は、国によって大きく異なります。アメリカやヨーロッパでは、建築材料や工業製品に大量のアスベストが使用されてきました。日本でも、戦後から高度経済成長期にかけて、アスベストが広く使用されてきました。

Fig.1 国別 アスベストの累積使用量の推移
(「アスベスト問題の現在と今後の対応」 東京工業大学 村山教授 より引用)

2.2 使用用途:建築物、工業製品などにおける違い

アスベストは、建築材料、工業製品、自動車部品など、様々な用途で使用されてきました。建築材料では、断熱材、耐火材、屋根材などに使用され、工業製品では、ブレーキパッド、摩擦材、フィルターなどに使用されてきました。

現在でも、一部のブレーキパッドやガスケット、セメントなどの製品には、アスベストの使用が認められている国や地域があります。そのため、条件次第でアスベストの使用が許可されている国や、そもそもアスベストの使用を規制していない国から製品を輸入する場合は、日本の基準値を超えるアスベストが含まれている可能性があり、注意が必要です。

2.3 残存量の把握状況:調査方法とデータの精度

アスベストの残存量は、国によって把握状況が異なります。日本は、アスベスト含有建材の調査義務付けなど、残存量の把握に力を入れています。しかし、海外では、調査が進んでいない国も多く、正確な残存量は不明な場合が多いです。

2.4 残存量の推定:国ごとの取り組みと課題

アスベストの残存量は、過去の使用量や建物の老朽化などを考慮して推定されます。国によっては、残存量の推定に基づいて、アスベスト対策を進めています。しかし、正確な残存量を把握することは難しく、今後の課題となっています。

3. 被害状況:海外と日本の比較

3.1 健康被害:アスベスト関連の疾病と発生状況

アスベストを吸入すると、肺がん、中皮腫、肺線維症などの深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。アスベスト関連の疾病は、発症までに長い潜伏期間があり、アスベストに暴露してから数年から数十年後に発症することがあります。

3.2 死亡者数:国ごとの統計データと比較

アスベスト関連の疾病による死亡者数は、国によって大きく異なります。アメリカでは、年間数千人がアスベスト関連の疾病で亡くなっています。日本でも、アスベスト関連の疾病による死亡者は増加傾向にあります。

Fig.2 アスベストが原因とされる中皮腫の死亡率(人口10万人あたり)の推移
(全国労働安全衛生センター連絡会議 GBD2019推計による中皮腫「死亡率」の推移 より引用)

3.3 社会的な影響:経済損失と医療費負担

アスベスト関連の疾病は、患者本人だけでなく、家族や社会全体に大きな影響を与えます。医療費負担や労働力不足など、経済的な損失も発生します。

3.4 環境への影響:大気汚染や土壌汚染

アスベストは、大気中や土壌中に飛散すると、環境汚染を引き起こします。アスベストが飛散した場所では、大気汚染や土壌汚染が発生し、健康被害や環境問題を引き起こす可能性があります。

まとめ

海外のアスベスト事情を学ぶことで、アスベスト問題の深刻さを改めて認識することができます。アスベストは、世界中で深刻な健康被害と環境問題を引き起こしており、適切な対策を講じることが重要です。

アスベスト問題への意識改革、適切な情報収集とリスク管理、今後のアスベスト対策への展望など、様々な課題を克服していく必要があります。

当社では、有資格者による事前調査、試料採取から分析、除染工事までを一貫してご対応いたします。お気軽にお問い合わせください。