CASES
比熱測定
試験概要
比熱とは、ある物質 1 [g] の温度を 1 [K] 上昇させるのに必要な熱量のことです。比熱が大きい物質は熱の含有可能量が大きくなるため、温まりにくく、冷めにくい性質を示します。比熱と関連のある物理量として熱伝導率があります。これは熱の伝わりやすさを表わす指標で、比熱は熱の含有可能量を表わす指標です。Table 1 で示されるように、比熱が高い液体は熱伝導率が低く、逆に比熱が低い金属は熱伝導率が高くなります。
熱量・熱容量と比熱の関係について
- 熱量 : Q [J] 熱運動の運動エネルギー量
- 熱容量 : C [J/K] 物体の温度を1 [K]上げるのに必要な熱量
- 温度上昇量: ΔT [K]
- 質量 : m [g]
- 比熱 : c [J/(g・K)]
Q = mcΔT (物質の種類と量と温度により決定される)
C = mc (物質の種類と量により決定される)
c (物質の種類によって決定される)
Table 1 比熱と熱伝導率の比較 @金属-液体
| 元素名 (金属) |
比熱:c |
熱伝導率:λ |
元素名 (液体) |
比熱:c |
熱伝導率:λ |
|
鉛 |
0.13 | 35.0 | 水 | 4.18 | 0.63 |
| 鉄 | 0.46 | 75.4 | アセトン | 2.04 | 0.17 |
| 銅 | 0.38 | 398 | アニリン | 2.07 | 0.17 |
| 亜鉛 | 0.38 | 113 | メチルアルコール | 2.95 | 0.21 |
| すず | 0.23 | 0.23 | グリセリン | 2.08 | 0.30 |
※20 ℃~25 ℃を基準とした参考値
測定方法について
比熱の測定方法には、フラッシュ法、DSC法、投下法、断熱法などの様々な測定方法がありますが、
当社ではフラッシュ法、DSC法が実施可能です。
Table 2に測定方法の比較を示しますが、比熱を単独で求めたい場合にはDSC法をお勧めします。
※熱伝導率まで測定したい場合はフラッシュ法で実施する場合が多いです。
比熱測定におけるフラッシュ法とDSC法の使い分けについて
Table 2 比熱測定におけるフラッシュ法とDSC法の比較
| フラッシュ法 | DSC法 | |
| 測定対象材料 | 均質、緻密 不透明な固体材料 |
粉体、液体、固体 |
| 測定温度範囲 | 室温 ~ 1400 ℃ | -100 ℃ ~ 1400 ℃ |
| 試料サイズ | φ10 mm 厚さt : 1 mm ~ 3 mm |
φ6 mm 厚さt : 1 mm |
| 測定精度 | ±7% | ±2.5% |
- フラッシュ法よりDSC法の方が、高精度の比熱測定が可能
- DSC法では測定可能な試料形状の範囲が広い (薄膜、粉末等)
- 試料の重量が十分確保できない場合は、フラッシュ法にて測定する (低密度試料)
DSC法による比熱測定
DSCには入力補償DSCと熱流束DSCの2種類があります。
- 入力補償DSC:試料及び標準物質で構成される試料部の温度を、一定のプログラムに従って変化させながら、両方(試料及び標準物質)の温度が等しくなるように両者に加えた単位時間あたりの熱エネルギーの入力差を温度の関数として測定する方法
- 熱流束DSC:試料及び標準物質で構成される試料部の温度を、一定のプログラムに従って変化させながら、両方(試料及び標準物質)の温度差を、温度の関数として測定する方法
Fig.1 DSC構造イメージ図 (入力補償DSC、熱流束DSC)
- 入力補償DSCではマイクロヒーターで試料周辺のみを昇降温するため、早い昇降温速度に適しているとされる
- 熱流束DSCではヒートシンクによって試料周辺全体が温度制御されるため、ベースラインの安定性が良いとされる
- 実際的には、どちらの方式でも同様のデータが得られることも多く、性能上の違いは個々の装置設計に依存する違いの方が大きいとされる

Fig.2 DSCによる比熱容量測定方法
Fig.2に示すように、DSCを使用すれば少量の未知試料で比熱容量 (Cps)を測定することができます。
(1)空容器、(2)標準物質、(3)未知試料を同一条件で測定し、得られたDSCデータから、未知試料の比熱容量をFig.2の式により算出することが可能です。
用途・規格
- JIS K 7123 : プラスチックの比熱容量測定方法
- JIS R 1611 : ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率測定方法
- JIS R 1672 : 長繊維強化セラミックス複合材料の示差走査熱量法による比熱容量測定方法