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Q-1010
アスベストの二つ名にまつわる話
(最終更新日:2025年4月23日)
今回は、アスベストの様々な呼び名とその背景にある歴史や社会状況について解説していきます。アスベストの危険性を知り、適切な対策を行うために、ぜひ最後まで読んでみてください。
<目次>
1. アスベストとは 2. 様々な二つ名 2.1 奇跡の鉱物 2.2 火に燃えない布 2.3 融けない雪 2.4 静かな時限爆弾 3. 社会への影響 4. まとめ
資料ダウンロードはこちら
アスベストは、古代メソポタミアから知られている鉱物で、ギリシャ語の「消滅せざるもの、永久不滅」を意味する「asbestos」に由来しています。火に触れても燃えないという特性を持つことから、古くから様々な用途で利用されてきました。
国際的な定義では、「蛇紋石族造岩鉱物に属する繊維状ケイ酸塩鉱物であるクリソタイル及び角閃石族造岩鉱物に属する繊維状ケイ酸塩鉱物であるアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クロシドライト、あるいはそれらの一つ以上を含む混合物」とされています (1986年 国際労働機関(ILO))
日本では、「石綿(いしわた、せきめん)」とも呼ばれ、これらの呼び名はアスベストと同義です。名前の通り綿のように軽く、白石綿(クリソタイル)などは羊毛のようなしなやかさを持っていました。天然に産出する鉱物でありながら、髪の毛の約5000分の1という極めて細い繊維構造をしており、糸や布に織りやすい特性を持っていました。
アスベストはその優れた特性から、さまざまな呼び名で呼ばれてきました。
綿のように軽く、石のように熱・摩擦・酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持ち、さらに安価であることから、「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品など)といった様々な工業製品に使用され、特に建築現場では欠かせない存在でした。
アスベストの歴史は古く、5000年以上前から「火に燃えない布」として、エジプトのミイラを包む布やランプの芯などに利用されてきたと言います。
日本でも、平安時代の竹取物語では、かぐや姫が求婚者に「火鼠の皮衣(ひねずみのかわぎぬ)」を持ってくれば求婚に応じることを伝えるシーンがあります。これが石綿でできた衣服だったのではないかと言われています。記録に残るところでは、江戸時代に、平賀源内が秩父山で採掘された石綿を使って「火浣布(かかんぷ)」と呼ばれる衣服を製作したとされています。
※「火浣布(かかんぷ)」とは、「火で浣(すす)ぐことができる布」という意味です。汚れた服を火の中に投げ入れると、汚れだけを落とす(すすぐ)ことができたことから付けられた名前と言われています。
水や火に強く、軽くて取り扱いが簡単なことから、映画の撮影現場での偽物の雪(フェイクスノー)として最適でした。映画「ホワイトクリスマス」のセットでは、本物の雪が平穏に降っているように見せるために、アスベストが使用されていました。ハリウッド以外でも、個人宅のクリスマスツリーにもアスベストが使用されていたそうです。
しかし、アスベストの危険性が明らかになるにつれて、ネガティブな二つ名で呼ばれるようになります。
空中に飛散したアスベスト繊維を長期間大量に吸入すると、肺がんや中皮腫などの深刻な病気を発症する可能性があることが指摘されるようになり、「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。
アスベストを原因とする肺の病気は潜伏期間が長く、厚生労働省によると、肺がんの潜伏期間は15年から40年、中皮腫の潜伏期間は20年から50年、石綿肺の潜伏期間は15年から20年とされています。
アスベストの危険性が認識されるようになったのは、20世紀後半からです。
1987年から88年にかけて、学校におけるアスベスト汚染が社会問題となりました。学校施設の吹き付けアスベストが、生徒や教職員の健康に悪影響を及ぼす可能性があるとして、国民の不安感を増大させました。
2005年、クボタ旧神崎工場で、多数の労働者や周辺住民がアスベストによる肺がん・悪性中皮腫に罹患、死亡していたことが報道されました。アスベストによる死亡者数は、アスベストを取扱う業務に従事していた労働者の1割以上にのぼりました。発病、死亡する労働者の数が極めて多数であること、家族や周辺住民にまで被害が及んでいることから、この事件はアスベスト問題の深刻さを改めて社会に認識させるきっかけとなりました。
これらの事件をきっかけに、アスベストに関する規制が強化され、使用が禁止されるようになりました。
アスベストは、かつては「奇跡の素材」として様々な場面で活躍していましたが、その危険性が明らかになったことで、今では「静かな時限爆弾」として認識されています。
アスベストは、現在でも多くの建物や製品に残されており、適切な対策を行わなければ、私たちの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。アスベストの危険性について理解を深め、適切な対策を行うことが重要です。
この記事が、アスベストの危険性と適切な対策について理解を深める一助となれば幸いです。
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(最終更新日:2025年4月23日)
今回は、アスベストの様々な呼び名とその背景にある歴史や社会状況について解説していきます。アスベストの危険性を知り、適切な対策を行うために、ぜひ最後まで読んでみてください。
<目次>
1. アスベストとは
2. 様々な二つ名
2.1 奇跡の鉱物
2.2 火に燃えない布
2.3 融けない雪
2.4 静かな時限爆弾
3. 社会への影響
4. まとめ
資料ダウンロードはこちら
1. アスベストとは
アスベストは、古代メソポタミアから知られている鉱物で、ギリシャ語の「消滅せざるもの、永久不滅」を意味する「asbestos」に由来しています。火に触れても燃えないという特性を持つことから、古くから様々な用途で利用されてきました。
国際的な定義では、「蛇紋石族造岩鉱物に属する繊維状ケイ酸塩鉱物であるクリソタイル及び角閃石族造岩鉱物に属する繊維状ケイ酸塩鉱物であるアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クロシドライト、あるいはそれらの一つ以上を含む混合物」とされています (1986年 国際労働機関(ILO))
日本では、「石綿(いしわた、せきめん)」とも呼ばれ、これらの呼び名はアスベストと同義です。名前の通り綿のように軽く、白石綿(クリソタイル)などは羊毛のようなしなやかさを持っていました。天然に産出する鉱物でありながら、髪の毛の約5000分の1という極めて細い繊維構造をしており、糸や布に織りやすい特性を持っていました。
2. 様々な二つ名
アスベストはその優れた特性から、さまざまな呼び名で呼ばれてきました。
2-1. 奇跡の鉱物
綿のように軽く、石のように熱・摩擦・酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持ち、さらに安価であることから、「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品など)といった様々な工業製品に使用され、特に建築現場では欠かせない存在でした。
2-2. 火に燃えない布
アスベストの歴史は古く、5000年以上前から「火に燃えない布」として、エジプトのミイラを包む布やランプの芯などに利用されてきたと言います。
日本でも、平安時代の竹取物語では、かぐや姫が求婚者に「火鼠の皮衣(ひねずみのかわぎぬ)」を持ってくれば求婚に応じることを伝えるシーンがあります。これが石綿でできた衣服だったのではないかと言われています。記録に残るところでは、江戸時代に、平賀源内が秩父山で採掘された石綿を使って「火浣布(かかんぷ)」と呼ばれる衣服を製作したとされています。
※「火浣布(かかんぷ)」とは、「火で浣(すす)ぐことができる布」という意味です。汚れた服を火の中に投げ入れると、汚れだけを落とす(すすぐ)ことができたことから付けられた名前と言われています。
2-3. 融けない雪
水や火に強く、軽くて取り扱いが簡単なことから、映画の撮影現場での偽物の雪(フェイクスノー)として最適でした。映画「ホワイトクリスマス」のセットでは、本物の雪が平穏に降っているように見せるために、アスベストが使用されていました。ハリウッド以外でも、個人宅のクリスマスツリーにもアスベストが使用されていたそうです。
しかし、アスベストの危険性が明らかになるにつれて、ネガティブな二つ名で呼ばれるようになります。
2-4. 静かな時限爆弾
空中に飛散したアスベスト繊維を長期間大量に吸入すると、肺がんや中皮腫などの深刻な病気を発症する可能性があることが指摘されるようになり、「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。
アスベストを原因とする肺の病気は潜伏期間が長く、厚生労働省によると、肺がんの潜伏期間は15年から40年、中皮腫の潜伏期間は20年から50年、石綿肺の潜伏期間は15年から20年とされています。
3. 社会への影響
アスベストの危険性が認識されるようになったのは、20世紀後半からです。
学校パニック
1987年から88年にかけて、学校におけるアスベスト汚染が社会問題となりました。学校施設の吹き付けアスベストが、生徒や教職員の健康に悪影響を及ぼす可能性があるとして、国民の不安感を増大させました。
クボタショック
2005年、クボタ旧神崎工場で、多数の労働者や周辺住民がアスベストによる肺がん・悪性中皮腫に罹患、死亡していたことが報道されました。アスベストによる死亡者数は、アスベストを取扱う業務に従事していた労働者の1割以上にのぼりました。発病、死亡する労働者の数が極めて多数であること、家族や周辺住民にまで被害が及んでいることから、この事件はアスベスト問題の深刻さを改めて社会に認識させるきっかけとなりました。
これらの事件をきっかけに、アスベストに関する規制が強化され、使用が禁止されるようになりました。
4. まとめ
アスベストは、かつては「奇跡の素材」として様々な場面で活躍していましたが、その危険性が明らかになったことで、今では「静かな時限爆弾」として認識されています。
アスベストは、現在でも多くの建物や製品に残されており、適切な対策を行わなければ、私たちの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。アスベストの危険性について理解を深め、適切な対策を行うことが重要です。
この記事が、アスベストの危険性と適切な対策について理解を深める一助となれば幸いです。